私の青年期

2022年11月に30歳になりました。焦っています。

残り82日 -コインランドリーの思い出(3)エディとの出会い-

これは今年で30歳になる私が、20代を終える焦りで始めたブログです。
30歳までの100日間、毎日30分は時間を取って書いてみようと思います。

 

eiraku-san.hatenablog.com

今回も引き続き青年期の生活の記録として、コインランドリーにまつわる思い出を書いていく。

 

⑤エディとの出会い

3年前のとある夏の夜、いつものコインランドリーに入ると白人の若者がいた。普段、外国人はいてもアジア系の人たちが多いから、珍しく感じたのを覚えている。彼は洗濯機を前に操作に戸惑っていた。

この辺りに住んでいるのだろうか、旅行者だろうか。そう考えながら、私が自分の洗濯物を放り込み支払いまで終えても、彼は手こずっているようだった。

たしかに外国人には説明が足りないだろうな、と思った。日本語の分かる私でさえ、初めてここを使ったときは戸惑った。誤って二回支払いをしたし、人の洗濯物に勝手に乾燥をかけてしまった。

ふと思い立って声をかけた。

"What do you want? Just wash? Just dry? Or wash and dry?"

その後の会話はあまり覚えていないが、そう声かけをしたのを覚えている。結局、彼は洗濯乾燥をしたがっていたから、その操作を手伝った。

 

洗濯乾燥が終わるまでの一時間、彼とローソンの前で話し続けた。彼は大学を卒業したタイミングで、ミネソタから二週間ほど旅行に来ていた。

「24時間やっているコインランドリーを探していたらここが見つかったんだ」と言っていた。

その後、彼の滞在中に二回会って朝まで飲み歩き、色んなことを語り合った。私の青年期にとって、とても大切な思い出だ。国が違って、言語が違って、所属しているコミュニティーもまるで違う。本当に偶然の出会いだからこそ、付き合いの長い友人とは話さないようなことも話せた気がする。

彼と交わした会話だけでなく、訪れた場所もまた、この街に住み始めて間もない頃の新鮮さも相まって、強く記憶に残っている。あの夏の繁華街の雰囲気、忍び込むように入った怪しい建物、川沿いの公園、カップルだらけの夜景スポット、ジャズバー。

当時の自分にとっても印象深かったのだろう。彼と話したことや行った場所をEvernoteのノートに残している。読み返すと、そのテキストの量に驚く。彼との思い出をひとつの記事にまとめたいところだったが、まとめきれる気がしない。また、別の機会に書くことにする。

 

ノイズミュージック

コインランドリーで交わした会話だけ、少し書き残そう。

彼は音楽が好きで、滞在中はレコードショップを巡り、特にカセットに熱中しているようだった。「何でもエクスペリメンタルなものが好きなんだ」と言っていて、特にノイズミュージックやハードコアが好きだった。

洗濯乾燥が終わった頃、ローソン前からコインランドリーに戻り、お互い洗濯物を畳み始めた。

彼は「日本のアーティストではShinji MasukoやGAUZEが好きだ」と言っていた。

youtu.be

(増子真二のバンドDMBQのライブ映像)

 

私は、ノイズに詳しくないが、たしかBOREDAMSやMerzbowが海外でも有名だと聞いたことがあった。私は少し聴いたことがある程度だったが、彼に尋ねてみると、

「ああMerzbowね、知ってるよ」と彼がさらりと言った。

もちろん一部の音楽好きは知っているだろうが、少なくとも私はMerzbowについて人と話したことがなかった。何なら口に出して発音をしたのもこの時だけだ。

コインランドリーでふたりで洗濯物を畳みながら、Merzbowの話をしていることの奇妙さ。

自分の音楽知識を訴えたいというより、この瞬間の不思議さを伝えたくなり、思わず、「コインランドリーでMerzbowを知っている日本人と話せることはなかなかないと思うよ」と言った。「One in a million、は言いすぎだけど、かなり珍しい」と。

彼も、たしかにそうだね、と笑っていた。

youtu.be

そしてコインランドリーを出て、Instagramのアカウントを交換してその日は別れた。

コインランドリーで友達ができたのは、後にも先にもこれだけだ。今のところは。

夜の公園とエディ